「アクメツ」

チャンピオンで連載している「アクメツ」という漫画が迷走しているようにみえます。ここ1年ほどしか読んでいないが、行き詰まりが見えて悲しいです。フェブリノゲン(血液製剤)を題材にすると、「ゴーマニズム宣言」と同じ展開にどうしてもなってしまうのでしょうか。やたら国粋チックで見ていて痛々しくなってきます。設定では、友人がフェブリノゲンから肝炎に感染し、亡くなったことをキッカケに、国を変えようと考える主人公が描かれています。

そういえば、友人にフェブリノゲンでC型肝炎に感染した人がいますが、実際的に彼はかわいそうな弱者ではありませんでした。むしろイヤなヤツでした。でも大変面白みのある人物で、イヤなのに縁が切れないという不思議な関係に私はおかれています。勿論、そのような血液製剤を放置した機関は処罰されるべきです。けれど、それが日本を変えるという文脈に置き換えるのは少し違う気がするのです。友人がC型肝炎に感染した事は非常に遺憾ですが、それは日本と言う国が腐っているからだ、と友人としては思えませんでした。あまり親密ではないからかもしれませんが。

小林よしのりの「ゴーマニズム宣言」の「脱正義論」でもHIVに感染した青年がイヤなヤツだった、というような記述があったような気がしますが、それは過剰に「被害者=いいヤツ」という図式が頭に入っていただけのような気がします。別に弱者だろうがイヤなヤツはイヤなヤツだし、かといって、イヤなヤツだから支援が必要ないというわけでもないと思います。

私情から始まる公憤が重要だと言う人もいますが、公憤から始まる私情もあります。それを偽善や同情として切り捨てる人もいますが、案外そういった、みせかけの優しさが福祉では一番重要だったりもします。それがこの沈黙の一年間に経験した様々な出来事で私が学んだことでした。